消化器外科医が語る
WT1樹状細胞ワクチン療法
が切り拓く
膵臓がん治療の新時代
監修
東京ミッドタウン先端医療研究所
所長島袋 誠守医師
- 1990年琉球大学医学部医学科卒業
- 豊見城中央病院 消化器外科副部長を経て、
- 2015年東京ミッドタウンクリニック 外来診療部長に着任
- 2015年8月東京ミッドタウン先端医療研究所 がん診療部長に就任(兼務)
- 2020年東京ミッドタウン先端医療研究所 副所長に就任
- 2024年東京ミッドタウン先端医療研究所 所長に就任


監修
東京ミッドタウン先端医療研究所
所長島袋 誠守医師
- 1990年琉球大学医学部医学科卒業
- 豊見城中央病院 消化器外科副部長を経て、
- 2015年東京ミッドタウンクリニック 外来診療部長に着任
- 2015年8月東京ミッドタウン先端医療研究所 がん診療部長に就任(兼務)
- 2020年東京ミッドタウン先端医療研究所 副所長に就任
- 2024年東京ミッドタウン先端医療研究所 所長に就任
免疫化学療法
切除不能「膵臓がん」
治療の進展
膵臓がんは、早期発見が難しく、多くの患者様が進行した段階で診断されるため、治療の選択肢が限られるがんのひとつです。
こうした状況のなか、免疫療法を標準治療と適切に組み合わせることで、より高い治療効果が得られる可能性が示されました。
東京ミッドタウン先端医療研究所が「WT1樹状細胞ワクチン」の作製に協力した、東京慈恵会医科大学の共同臨床研究では、切除不能膵臓がん(手術が難しい進行・転移性のステージⅢ・Ⅳ)に対する免疫化学療法※1が実施されました。
その結果、治療奏効率※270.0%・病勢制御率※3100%を達成し、手術が困難と診断された患者様のうち、7名が手術可能な状態に改善しました。
- ※1東京ミッドタウン先端医療研究所 東京慈恵会医科大学による切除不能膵癌に対する免疫化学療法の考案・実施 -Wilms腫瘍(WT1)樹状細胞ワクチンの作製で協力-
https://www.amcare.co.jp/wp-content/uploads/2024/11/PR_release_sentan_amc20241121.pdf - ※2治療奏効率:腫瘍が一定以上に縮小するなど、治療によって効果があらわれた患者様の割合
- ※3病勢制御率:腫瘍の進行が認められず、一定期間にわたり病状が安定していた患者様の割合


特許技術による
WT1樹状細胞ワクチン療法
当臨床研究で実施したWT1樹状細胞ワクチン療法は、がんがもつ目印(がん抗原と呼ばれるタンパク質)のひとつ「WT1」を利用し、がんと闘う力(免疫)を高めることを狙う免疫細胞療法です。
当治療では、がんに対する免疫反応を強化するように加工した人工がん抗原(目印)「WT1ペプチド(大阪大学医学部・杉山治夫教授による開発・特許取得)」を使用しています。
患者様の血液から採取した、樹状細胞のもととなる「単球(免疫細胞の一種)」を培養し、WT1ペプチドを組み込んで樹状細胞へと成熟・強化。その細胞を体内に戻すことで、免疫システムを活性化し、がんと闘う力を高めることが期待されます。

WT1樹状細胞ワクチン療法は、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)などと同じく体全体に作用することで、腫瘍や微小ながん細胞をたたく治療法です。
がんの増殖を抑える化学療法と、免疫を活性化させるWT1樹状細胞ワクチン療法を併用することで、相乗効果が期待でき、膵臓がん治療の選択肢を広げる可能性があります。
Doctor's Comment
免疫の力は目には見えませんが、がん治療の根幹を支える重要な役割を担っています。免疫システムを維持・向上させることで、がん治療は本来以上の力を発揮できる可能性があります。
化学療法×WTI樹状細胞ワクチン療法
臨床試験の成果
この臨床試験では、標準治療(化学療法)にWT1樹状細胞ワクチン療法を併用することで、がん治療の効果を向上させる可能性を検証しました。
抗がん剤の投与を1クール実施後にWT1ワクチンを併用。その結果、「奏効率70.0%・病勢制御率100%」が得られました。
また、手術が不可能と判断されていた進行膵臓がん患者様10名のうち7名が、治療後に手術可能な状態に改善。そのうち4名は長期間にわたり腫瘍サイズが安定し、生存を維持しています。
さらに、手術が可能となった患者様の膵臓がん部位を詳しく調べたところ、がんと戦う免疫細胞(リンパ球)が多く集まり、逆に免疫の働きを抑える細胞(抑制性T細胞)が少ないことが確認されました。
これまで、膵臓がんの周囲は免疫の働きが弱まり、がんが進行しやすい環境にあるとされていましたが、本研究の免疫化学療法によって、免疫が活性化された状態へと変化している可能性が示唆されています。
- ※研究の詳細は、2024年10月8日にJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌オンライン版に掲載されています(当論文は英文となります)。

Doctor's Comment
当臨床研究成果は、免疫細胞療法と標準治療を適切に組み合わせることで、膵臓がんの治療選択肢を広げる可能性を示唆するものです。現在もさらなるデータ収集と分析が進められており、本療法の発展が期待されています。

臨床試験を通じて:
島袋医師よりメッセージ
免疫はがん治療の土台。
適切な治療を適切なタイミングで
この臨床試験で特に注目すべきポイントについて教えてください。
本臨床試験では、膵臓がんの標準治療(化学療法)にWT1樹状細胞ワクチンを併用し、治療の開始時期や投与回数を厳密に管理した点が特徴です。その結果、臨床試験に参加した患者様のうち、7名が手術可能な状態に改善し、4名が長期生存中です。
従来、手術が難しいとされた膵臓がん患者様に対して、適切なプロトコルに基づいた免疫療法と標準治療の併用が、どれくらい効果が期待できるかということに、一番着目していました。
研究を通じて、特に印象的だったエピソードはありますか?
特に印象的だったのは、治療の開始タイミングと投与回数を統一することで、より確かなデータを得ることができた点です。
免疫療法は患者様ごとの病状に応じて異なるタイミングで始められることが多いですが、本試験では、標準治療の抗がん剤レジメン(投与計画)を統一し、それが1クール終了した後に免疫療法を開始するプロトコルを採用しました。この一貫した管理により、治療効果の評価が明確になり、免疫療法と標準治療の組み合わせがもたらす影響をより正確に分析することができました。
今回の研究が、膵臓がん患者様にどのような希望をもたらすと考えていますか?
膵臓がんは「治療の選択肢が限られるがん」と考えられがちですが、適切なタイミングで治療を受けることで、治療の可能性が広がることが今回の研究で示されました。
「治せる治療がある」のではなく、「治る人がいる」という考え方が重要で、標準治療だけでなく、免疫療法を組み合わせることで、治療の可能性が広がることを、多くの方に知ってほしいです。
ただし、免疫療法は標準治療の代わりになるものではありません。まずは標準治療をきちんと受けることが、治療の土台として重要です。その上で、ご自身の病状に応じた治療の選択肢を知り、判断のタイミングを見極めることが大切です。
私たちは、患者様が納得のいく選択をできるよう、正確で信頼できる情報を提供し続けることが重要だと考えています。
治療に関する正しい知識を持つことで、患者様が後悔のない決断をできるよう、今後も研究や情報発信に努めてまいります。
WT1樹状細胞ワクチン作製における
細胞培養技術・設備
東京慈恵会医科大学との共同研究において、先端医療研究所はWT1樹状細胞ワクチンの作製に協力しました。
当施設では、細胞培養加工施設(CPC: Cell Processing Center)を完備し、徹底した衛生管理のもと、細胞を培養・加工する技術を活かしてワクチンの製造を行っています。
CPCとは?

細胞を培養するために必要な高い清浄度を維持する専用のクリーンルーム(無菌室)です。ここでは、免疫細胞を培養・加工し、がん治療に応用するワクチンを作製しています。
徹底した品質管理

各学会が定める「免疫細胞療法細胞培養ガイドライン」に準拠し、日本再生医療学会認定の臨床培養士を中心としたチームが、細胞培養からワクチン作製までを細心の注意を払って管理しています。患者様ごとにオーダーメイドで細胞を培養し、丁寧かつ安全に作製しています。
Doctor's Comment
培養の条件は毎年改良を重ねています。たとえば、細胞を育てるためのシャーレ(培養皿)を、より細胞が定着しやすいものに変更したり、試薬や培養液を日本製の安定供給が可能なものに統一するなど、より良い環境を整えています。
ワクチンの品質を安定させるために、培養士が細かい部分まで工夫を積み重ねています。
WT1樹状細胞ワクチン療法について、
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よくあるご質問
- Q
樹状細胞ワクチン療法は自由診療ですか?
-
A
自由診療です。当施設で治療をうけられる場合、1クール分の費用には、治療中に必要な検査(血液検査)、ワクチンの作製・保管、ワクチン投与費用などが含まれております。
1クール費用 2,849,000円(税込)
- ※上記は一例となります。お身体の状態や治療内容によっては費用が異なります。
(治療費平均は280万円程度です。) - ※初診料・再診料・相談料等、治療内容によって異なります。
- ※日本の健康保険証をお持ちでない方は、費用が異なります。
- ※上記は一例となります。お身体の状態や治療内容によっては費用が異なります。
- Q
健康保険は適用されますか。また、医療費控除の対象となりますか。
-
A
自由診療のため健康保険は適応外ですが、「医療費控除」の対象となる可能性があります。領収証は医療費控除を受けるための確定申告の手続きに必要となりますので、大切に保管しておいてください。
医療費控除について詳しくは、お近くの税務署までお問い合わせください。 - Q
副作用はありますか。
-
A
ご自身の細胞を用いて治療を行うため、副作用は軽微です。
主な副作用は38度前後の発熱とワクチン投与局部の発赤ですが、これはお身体の免疫機能がワクチンに反応している好転反応と考えられています。その他、重篤な副作用は報告されていません。
施設概要

東京ミッドタウン先端医療研究所
〒107-6206
東京都港区赤坂9丁目7-1ミッドタウン・タワー6F
(東京ミッドタウン施設内)
- ・東京メトロ日比谷線/都営地下鉄大江戸線「六本木駅」より直結
- ・東京メトロ千代田線「乃木坂駅」3番出口より徒歩7分
- ・東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」1番出口より徒歩8分
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Doctor's Comment
免疫療法と化学療法(抗がん剤)を適切なタイミングで併用することで、単独治療では得られない膵臓がん治療の新たな可能性が広がることが期待されています。