再生医療コラムひざ・肩の痛みに幹細胞治療という選択肢 ― 市民公開講座「健康こそ最高の幸せ!幹細胞治療への期待」より ―

市民公開講座「ひざや肩などの痛みに対する幹細胞治療の効果」の様子
お茶の水セルクリニック 院長
寺尾友宏 (てらおともひろ)先生

※所属・肩書はコラム執筆当時(2025年6月時点)のものです

「ひざが痛くて階段の上り下りがつらい」「肩の痛みで腕が上がらない」
年齢を重ねるにつれて多くの方が悩まされるこうした関節の不調。治療といえば、注射やリハビリ、手術というイメージが強いかもしれませんが、いま、再生医療のひとつとして「幹細胞治療」が注目されています。

2025年3月に開催された市民公開講座では、整形外科領域で幹細胞治療を行うお茶の水セルクリニック院長・寺尾友宏医師が、ひざや肩などの関節痛に対する幹細胞治療の効果や、実際の治療法について解説してくださいました。

本コラムでは、その講演内容をもとに、整形外科分野における幹細胞治療の役割や治療効果の実際についてご紹介します。

関節の痛みは、なぜ起こる?

年齢を重ねたり、日常的な負荷が蓄積されたりすることで、関節内の組織が傷み、不調を感じる方が増えてきます。
関節の内部はもともと血流が少なく、自然に治る修復メカニズムがとても弱い場所です。幹細胞の居場所も少ないため、自然治癒の力が働きにくく、不調が長引きやすくなると考えられています。

幹細胞治療とは、「自己修復力を底上げする治療」

幹細胞には、傷んだ組織を修復したり、炎症を抑えたりする働きがあります。
関節内に幹細胞を投与することで、もともとの細胞では修復が難しかった部分に再生の力を加えることができ、以下のような効果が期待されます。


  • 関節組織の修復
  • 関節内の炎症状態の緩和
  • 免疫細胞の働きを整える作用

投与された幹細胞は、特に滑膜(関節を覆う膜)を中心に、関節内の環境を整えることで、修復しやすい状態をつくります。
ポイントは、「幹細胞だけが働く」のではなく、もともと関節に存在する細胞たちとも協力しながら、治す力を引き出していくという点です。

治療効果は状態により異なります

幹細胞治療による改善度は、変形の進行度や関節の状態によって異なります。
たとえば、すでに軟骨がすり減り、関節の骨同士が接しているような状態では、治療の効果が出にくいこともあります。

また、治療後の過ごし方もとても大切です。
リハビリや筋力トレーニングにしっかり取り組むことはもちろん、関節に負担をかけない日常動作を意識することが、良好な状態を維持するうえで欠かせません。

実際の症例から見える効果の幅

講演では、実際に幹細胞治療を受けた患者様の事例も紹介されました。

たとえば、関節のダメージが比較的軽い方では、治療前に「VASスコア(痛みの強さを0~100で示す指標)」が53だったところ、治療から1か月後には9にまで軽減したという報告がありました。
一方、変形の強いケースでも、VASスコアが72から大きく下がり、現在も痛みなく日常生活を送れている方もいらっしゃいます。
ただし、重度の変形がある場合は、軟骨そのものを修復するのは難しいことが多く、「変形自体を治す」ことよりも「痛みなどの症状をやわらげる」ことを目指す治療として、意義があると考えられます。

まとめ

幹幹細胞治療は、整形外科領域においてこれまでの治療で十分な効果が得られなかった、関節の痛みに悩む方や、手術を避けたいと考える方にとって、新たな選択肢となり得る治療法です。
もちろん、すべての方に同じような効果が現れるわけではありません。
変形の進行度や関節の状態に応じて、医師による適切な診断のもとで、生活習慣の見直しやリハビリを組み合わせた包括的な治療を行うことで、効果が期待されます。

この記事は、お茶の水セルクリニック院長・寺尾友宏医師による市民公開講座「ひざや肩などの痛みに対する幹細胞治療の効果」の内容をもとに作成しました。

取材にご協力いただいたドクター

寺尾 友宏(てらお ともひろ)医師

寺尾 友宏(てらお ともひろ)医師

お茶の水セルクリニック 院長
日本整形外科学会専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本再生医療学会再生医療認定医

記載されている所属・肩書は、2025年06月時点のものです。