再生医療コラム健康長寿をかなえるには?フレイル・認知症予防と再生医療の可能性 ― 市民公開講座「健康こそ最高の幸せ!幹細胞治療への期待」より ―
幹細胞治療
公開日:2025年08月01日

田口淳一 (たぐちじゅんいち)先生
※所属・肩書はコラム執筆当時(2025年6月時点)のものです
人生100年時代、あなたは“健康に長生きする準備”ができていますか?
高齢化社会が進むなか、「フレイル(身体機能の低下)」や「認知症」など、年齢を重ねることで生じる健康課題にどう備えるかは、誰にとっても身近なテーマとなっています。
2025年3月に開催された市民公開講座では、東京ミッドタウンクリニック総院長・田口淳一医師が登壇。「脳」と「体」両面から健康寿命を延ばすために、いま私たちができることを、最新の医療や研究を交えてわかりやすく解説してくださいました。
本コラムでは、その講演内容をもとに、再生医療の可能性も含めた“健康長寿”へのアプローチをご紹介します。
プレフレイルのうちに気づくことが重要
「フレイル」とは、加齢に伴って心身の活力が低下し、病気ではないものの、筋力の衰えや外出機会の減少、社会的なつながりの喪失などにより、日常生活に支障をきたしやすくなる状態を指します。介護が必要になる一歩手前の段階として、高齢者の健康課題として注目されています。
なかでも重要なのが、「プレフレイル(フレイルの前段階)」と呼ばれる初期段階での気づきと対策です。プレフレイルの時期には、自覚症状があまりないことが多いため、本人も周囲も変化に気づきにくい傾向がありますが、早い段階での生活習慣の見直しや医療的なサポートが、その後の健康状態に大きく影響すると考えられています。
近年では、栄養管理、運動、睡眠、社会活動などを包括的に見直す「先制医療」の考え方が広まりつつあり、プレフレイルの段階からの早期介入がますます重要視されています。
脳の健康維持も、フレイル予防の鍵に
フレイルというと、筋力や骨、血管など身体の衰えに注目が集まりがちですが、同時に「脳の健康」を守ることも見逃せません。とくに、記憶力や判断力の低下につながる認知機能の衰えは、身体の不調と連動して進行することが多く、フレイル予防の重要な視点となります。
その取り組みのひとつが、「MRIを活用した脳の健康チェック」です。MRI画像をもとに、脳全体の体積や特定部位の変化を確認することで、将来的な認知機能の低下リスクを把握することができます。こうした検査結果を生活習慣の改善につなげることが可能になります。病気を診断する前の「予兆」を捉えるこのようなアプローチは、予防医療の観点からも重要です。
生活習慣と社会活動が、脳と体の健康を支える
健康長寿を実現するためには「身体の健康」「社会的活動」「脳の健康」が重要です。とくに高齢期には、病気があるかどうかだけではなく、「元気でいられるかどうか」が大切であり、そのために日々の生活習慣を見直すことが求められます。
身体の衰えを予防するには、運動や栄養、睡眠といった基本的な生活習慣が欠かせません。そして、同じように重要なのが「人とのつながり」や「社会との関わり」を持ち続けることです。
早い段階から生活習慣を見直し、人とのつながりや趣味を持つことが、健康長寿を支える土台となります。
認知症ポータルサイト

脳と体の健康を支える情報源として、「認知症ポータルサイト」もご紹介します。
このサイトは、田口医師が理事を務める 一般社団法人 脳の健康を守る総合研究所が運営しており、“脳の健康”をテーマに、「認知症予防」「早期発見・診断」「治療」「介護・ケア」に関する情報を発信しています。
血液浄化療法×幹細胞治療の可能性
健康長寿を目指すうえで、生活習慣の見直しや社会的つながりの維持と並んで注目されているのが、“血管の健康”に対する先進的アプローチです。なかでも、「血液浄化療法(アフェレーシス)」と「幹細胞治療」を組み合わせた再生医療が注目されています。
血液浄化療法は、悪玉コレステロールや中性脂肪、炎症物質など、生活習慣病や動脈硬化の原因となる物質を、血液から“直接”取り除く治療法です。体外に取り出した血液を特殊なろ過膜で浄化し、再び体内に戻すことで、血管の状態を改善することを目的としています。動脈硬化による血管内皮のダメージを抑えるとともに、血流や全身のコンディションを整える効果が期待されています。
これに加えて、幹細胞治療を組み合わせることで、さらなる相乗効果が期待されています。
幹細胞には、病気や加齢によって損傷した組織や細胞の修復・再生を促したり、炎症を抑える働きがあり、再生医療の分野で活用が進んでいます。とくに、血管の損傷が関わる動脈硬化に対しては、幹細胞によって血管の修復を促すことで、症状の進行を抑え、健康状態の改善につながると考えられています。
血液浄化療法×幹細胞治療は、「動脈硬化」だけでなく老化にも「炎症」が重要な役割を果たしている事が知られています。血管年齢の若返りや、炎症の制御による体内環境の改善を通じて、年齢を重ねても健やかに過ごすための新たな選択肢となるかもしれません。
もちろん、すべての方に同じ効果が現れるわけではありませんが、日々の生活習慣の改善とあわせて、こうした先端医療を選択肢のひとつとして知っておくことは、自分らしく年齢を重ねるための備えとして役立つはずです。
まとめ
健康長寿を目指すうえで、「身体の健康」「脳の健康」「社会的なつながり」は、いずれも欠かすことのできない大切な要素です。日々の生活習慣を整え、早い段階から予防に取り組むことが、フレイルや認知症のリスクを減らす第一歩となります。
このコラムが、ご自身の健やかな未来を考えるきっかけとなれば幸いです。
取材にご協力いただいたドクター

田口 淳一(たぐち じゅんいち)医師
東京ミッドタウンクリニック 総院長・健診センター長
日本内科学会総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
日本人間ドック学会 遺伝子検査に関わる検討委員会 委員長
東京医科大学 客員教授
日中医学交流センター 理事 他